「黒瀬、何で時枝さんあんなに怒っていたのか理解できる?」
「さあね。情緒不安定な乙女の心理じゃない? シーツに血ぐらいで変なヤツだ。気にしないでいいから、食べよう」
短時間で作ったとは思えない彩り豊かな料理を潤と黒瀬はゆっくりと堪能した。
食事を終えた潤が椅子に座ったままで何やらモジモジしている。
「どうした?」
「あのな、食べて直ぐで悪いんだけどトイレに行きたい…昨日から行ってない」
「オシッコ?」
催しているのは尿意だけだが、よく考えたら、二十五日にイギリスを経ってからこの三日排泄をしてない。
飛行中はトイレでゆっくり用を足すような精神状態ではなかったし、日本に着いてからも本宅の離れの露天風呂で寝てしまい、トイレには行っていない。
起きたら朝から血を流しながらのハードな結合をしてしまい、それから今日の朝まで、同じような結合三昧で、潤は身体に溜め込んでいる状態だ。
しかも、今は裂傷が酷くて、尿意は起きても便意は全然感じない。
「うん」
「だけじゃ、駄目だろ。潤、私が気付いてないと思う? してないよね?」
ヤバイ、これはどこかで経験した流れと同じじゃないのか?
まさか…、そんなことは…しない……よな……
「…」
「もう用意してあるから。心配しないで」
用意? 何のだよっ。
「潤はコーヒーとイチジクとスペシャル、どれが好き?」
「食後のデザートの話じゃない…よな。スペシャルってなんだ?」
それって、あの種類だろ。
「選んだら教えてあげる」
「何だか分からないのに、選べない……」
とぼけてやる…恥ずかしい…
「じゃあ、私が選ぶから。ふふ、折角だからスペシャルにしようね」
「そんなことより、トイレ。漏れる…」
連れて行ってくれよと、潤が腕を投げ出した。
黒瀬が席を立ち、潤を抱き上げる。
「そろっとな。振動で漏れそうだ」
「そこまで我慢してたの? 膀胱炎になるよ」
「食事中にトイレに立つのは行儀悪いだろ」
そうだねと頷いた黒瀬が、足早に、しかし潤の身体を揺らさないよう気を遣いながら運ぶ。
「え、トイレ個室じゃないの…」
運ばれた先は、広いバスルームだった。
すますヤバイ感じになってきた。
大きな円形のバスタブが中央に見える。
バスルーム入口から左手直ぐに洋式トイレが設置してある。
その隣がシャワースペースとなっている。
脱衣場と浴室の区切りのみで、トイレとシャワーとバスタブは同じ空間内だ。
「個室のトイレもあるけど、ここ元々外国人向けの設計だから、バスルームにもトイレ付いてるんだよ」
「黒瀬、分っていると思うけど、俺がしたいのオシッコだから」
もちろんわかっているよと、黒瀬が潤を便器の前に立たせる。
踏ん張って立てない潤の背中に自分が支えになるように、黒瀬が陣どる。
「あの、黒瀬…、したいんだけど、まさかそこにずっといる気?」
「一人で立てない子が何言ってるの? 当たり前だろ、潤」
そんな……。
先端から精液を飛ばすところは何度も見られている潤だったが、排尿シーンを黒瀬に晒すと思うだけで尿意が止まりそうだ。
「見られると出ないよ…」
素直に潤が口にする。
「大丈夫、ちゃんと手伝うから」
何をだよっ!
「さ、しなさい」
だから、退(ど)いてくれよ。
そしたら、便器に座ってするから…… したいの出せなくて、膀胱がもう本当に限界だった。
用を足す準備すらしない潤に変わって、黒瀬の手がガウンの前を割って入る。潤の中心をガウンから取り出し、便器に向けた。
「出しなさない、潤」
「…出ないよ……」
「出さないと、ここに管入れるよ? それでもいい? 痛いよ」
先端の穴を指で押さえながら怖いことを言う。
想像しただけで、身体に震えが走った。
その瞬間を見逃さないように、黒瀬の片手が下腹を押し、さらに性器を持った方の手が排尿を促すように穴を刺激した。
「あっ」
下腹の筋肉が弛緩し、黒瀬の指を潤の尿が濡らした。
「いいから、最後まで出しなさい。温かいね、潤のオシッコ」
黒瀬にかけるなんて、なんてことしてしまったんだろう……。
現実逃避したい心境で、潤は自分の体内から迸る尿を見つめていた。