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「ん、…ァあああっ…あっ、」

先に、潤が爆ぜた。潤の飛沫が、黒瀬の下腹を直撃する。

「…はぁ、全部、欲しい…、全部、注ぎこんで…、」

黒瀬の射精の予兆を内部で感じた潤が、黒瀬に注文を付ける。

「あっ、潤っ、」

潤の精液を下腹で全て受け止めた黒瀬が、僅かな時間差で果てた。
潤の望み通り、黒瀬は全てを潤の中に注ぎ込んだ。
戻ってきた裂傷の痛みと内部に飛び散った黒瀬の精液の感触が、甘い微電流となって果てた潤の身体を流れ、幸福感と充実感、更に次への欲望を潤に与えた。

「ありがと、黒瀬…」

繋いでいた手を解くと、黒瀬が潤の頬を撫でる。

「泣いてる」

自覚はなかったが、潤は涙を零していた。
その露を黒瀬の指が優しく拭い取る。

「潤は泣き虫だよね」
「しょうがないだろ、泣かせるヤツが側にいるんだから」
「まるで私が苛めているような言い方だ」
「…もっと、苛めてみる?」

まだ潤の中に留まっていた黒瀬をギュッと潤が締め付けた。

「この子猫は、いつの間にそんなこと覚えたんだ? ホントに苛めてしまいそうだよ。酷く裂けてるから、痛いはずだ」

自分が傷を負っているかの如く、黒瀬が辛そうな顔を見せる。
それが潤の望みだったとはいえ、ここまで酷くはしたくなかった。

「そんな顔、すんなよ。今日は痛くてもいい…まだ欲しい…ココ見て」

潤が自分の下腹部を指さした。

「ふふ、勃ってる…」

一度欲望を吐き出し、小さく収まっていた潤の性器は、また芽生えた欲求を反映して半勃ち状態だった。
痛みよりも、黒瀬を求める欲望の方が勝っている証拠を黒瀬に見せつけた。

「ここも…」

今度は黒瀬の手を自分の胸に誘導した。
「触って欲しそうに、熟れているね」

「…あんっ」

両の乳首を黒瀬の指が挟んだ。

「そんなに苛めて欲しいんだ」
「ああ、優しく苛めろよな、黒瀬…」

潤が自分を見下ろす黒瀬の身体を引き寄せ、自分から黒瀬の唇に唇を重ねた。
存在を確認しあうような激しい営みとは違い、甘美な快感を伴った行為が、それから潤が音をあげるまで続いた。

「スッキリしたか? 店のナンバーワンを譲ったんだから、もっと嬉しそうな顔しろよ」

風俗店とラブホテルがひしめき合う歓楽街。
とりわけ目立つヨーロッパの古城を模した建物から、桐生組組長の桐生勇一とクロセグループの社長秘書時枝勝貴が、肩を並べて出てきた。
建物の看板には洒落たレタリングで『ソープ・不夜城』とある。
不夜城と言うぐらいだから、夜通し営業している店なのだが、今の時刻は昼の二時を回ったところだ。
慌ただしい年末の昼間ということもあって、歓楽街の通りに人は少ない。
ソープ不夜城は人気店のため、周囲の状況などお構いなしに、待合いには今年最後にもう一発抜いてもらおういうスケベ面した男達で溢れていた。
そんな男達を尻目に、入店するなりVIPルームに通され、店のトップにそれぞれ手厚いサービスを受けた二人だった。

「はいはい、ありがとうございました。どこに連れて行かれるかと思えば、桐生組直営の風俗店とは、ありがたくて、涙がでますよ」
「素直に、喜べないのか? 溜まってたくせに可愛くないヤツ。ルミのテクは最高だったろ? ここの方が素直だ」
ズボンの布越しに、桐生組組長、勇一の手が隣を歩いている時枝の一物を握った。
「気持ち良かったと言ってる」
「いい加減にしろ!」

大声をあげて殴りたい気持ちはやまやまだったが、二人の背後を附いてくる警護の組員数名の手前、殴る訳にもいかない。
昔からの気安い間柄とはいえ、立場の違いはちゃんとわきまえているのが時枝だ。
低い声で諌めながら、勇一の手を払う。

「おまえ、昔はもっと素直だったのにな。一緒にナンパしてた頃が懐かしいぜ。もっと本能には素直になった方がいい。溜め込むのは身体によくない」

『3p、4p、楽しかったよな』と小声で勇一がイヤらしく続けた。
そんな昔のくだらないことをよく覚えているものだと、時枝が眼鏡越しに冷たい視線を投げつけた。

「組長は、まだよく遊んでおられるようですが、そろそろ身を固められたいかがですか? 下の者も心配しているんじゃないですか?」
「おいおい、それをお前が言うか? そのままお前にその言葉返すわ。お互い、初恋の相手が悪かったな」
「…そうですね。あの方以上の女性と出会うことは無理ですし、どうしても比べてしまう」
「だろ? 同じだ」

歩きながら、「はぁ」と、時枝が深い溜息をついた。

「ん、どうした?」
「勇一と、いや組長と、感性が同じかと思うとガックリきました」
「失礼なヤツだ。何を今更」
「組長がまだ独り身の理由があの方って事に、軽い失望を…はぁ」
「ま、女には不自由してないし。お前も相変わらずモテるだろ?」
「ええ、おかげさまで。残念ながら、社長のお守りでデートをするような時間はありませんが。しかもお守りが一名増えましたしね」
「はは、そりゃそうだ。まだ二時過ぎか…もう少し付き合え」

勇一は後ろを振り返ると、組員の一人に車の手配をさせた。

「二人っきりで話しがある」

本宅には戻らず、勇一が別に隠れ家として所有しているマンションへお供を排除して向かった。