「…つっ…う」
覚えのある激痛が走る。 思わず口から出そうになる「痛い!」という叫びを潤は必死で封印した。
痛みを口にすれば、黒瀬も辛いだろうと、歯を食いしばり耐えた。
「痛いんだろ? 我慢しなくていいから」
「…大丈夫…、全部…は…やく…ッ…」
まだ半分も埋まってない。
早く全てを受け入れたかった。
「潤、愛してるから…」
裂けた窄まりから出血による潤いを借り、黒瀬が最奥まで一気に突き上げた。
「あっ、う…っ……」
凄まじい痛みに、潤の爪が黒瀬の背中を食(は)んだ。
潤を気遣ってか、黒瀬は動きを止めた。
「く、ろせ…あり…がと……」
潤の左右の目尻から、一筋ずつ涙が流れた。
「…潤」
激痛が嫌というほどの現実感を潤に与え、それを与えているのが黒瀬の欲望だと思うと嬉しかった。
――やっと、俺たち繋がった… イギリスのアパートメントホテルの一室で、時枝に押さえ込まれ、黒瀬に無理矢理強姦されたときと同じように身体を切り裂かれたというのに、潤の心は満たされていた。
「潤の中、温かい…わかる? だんだん馴染んでくるよ」
黒瀬が潤の中で潤の身体が自分を受け入れるようになるのを、静かに待っていた。
異物を拒むことに必死だった内部も、やっと潤の想いと連動したのか、今度はジワジワと包み込むように絡んでくる。
「中で…大きくなってる…」
「潤の中が気持ちいいからね。しょうがないだろ? 痛みは酷い?」
「大丈夫…経験済みだから…」
少しだけ意地の悪いことを口走る。
「ふふ、言ってくれるね」
「でも…あの時とは違う…俺が黒瀬を欲しいんだから…」
「私も欲しいよ」
「もっと?」
「ああ。もっと可愛いくて、でも男っぽくて強い潤が欲しいよ。ほら、ここもそう言ってる」
ムズっとまだ内部で黒瀬の雄芯が膨張した。
「あっ、ヤバイ、感じた…黒瀬、」
ねだるように、濡れた瞳で潤が黒瀬を見上げる。
「ん?」
「…欲しい…、動いてよ、気持ち良くして…」
「煽るね、ふふ、どうなっても知らないよ?」
「…啼かせろよ」
「お望み通り、啼かせてあげる」
激痛は退いたのか慣れたのか、あまり感じなくなっていた。
ジンとした痛みが残ってはいる。
それよりも潤の内壁を隙間なく埋める黒瀬の雄芯が心臓の鼓動のように息づいているのを感じ、官能への期待が徐々に湧き上がってきた。その先が欲しかった。
痛みとは違うもっと激しい刺激が。
「んっ…あぁっ、」
ズルッと黒瀬に退(ひ)かれ、落胆の声が上がる。
「あぁああっ…ん…」
退いたモノを今度は内壁を抉るように突き進んでくる。
「潤、手を貸してごらん」
黒瀬の背中に置かれていた手を降ろさせ、手と手を繋ぎ合わせた。
「目を閉じないで、私の目を見て」
湧いてくる快感を味わうように瞼を降ろす潤に黒瀬が指示を出す。
「…あぁ‥、くろ…せ…っ、」
艶っぽく淫靡な視線を送られ、繋がった下半身だけでなく、視線でも犯されているように、潤の身体に熱が走る。
「潤、離さないよ」
ゆっくりだった動きに速度が加わる。
「…はっ…、あぁ…、あ、たり‥まえだっ…」
「ごめんね、もう、離せないよ」
「…な‥んで、…あや…ま‥るっ…」
謝罪される覚えはない、と潤が睨み付ける。
「潤を壊してしまいたくなるほど、好きだよ」
「うっ、ぁあっ、」
速度に加えて更に奥を開拓しようと、強さも加わる。
黒瀬から強い刺激と快感が与えられ、その官能の強さが潤の雄芯に形として現れていた。
中を突き上げられる振動で、陰茎全体が揺れ、その度に先端から露が溢れる。
「潤の、泣いてる」
「…バカッ、…そこ…も、うれし…、なき…ぁあ…ン…してんだ…ろっ…」
「中もグジュグジュ。気持ちいい?」
ドンと突き上げる。
「うっ、わっ…、バカッ、…いい…、スゴッ…く、い…い…」
「潤、本当に壊してしまいそう……愛してる」
「…ぁあうっ、…こわ…せ、よ…。あぁ…ん、くろ、せ…に…、こわされ…てもっ…いい…」
黒瀬の抽送が激しくなり、押し寄せる快楽の波で潤の視界が曇ってくる。
「ぁあ、くろせっ、…すきっ、…すきっ、こわせっ…!」
「はっ、はっ、潤、」
黒瀬の息も荒くなり、クライマックスが近いのがわかる。
そんな黒瀬を煽るように、潤は自ら黒瀬の動きに合わせ腰を振り、よりお互いの欲望を引き出そうとした。